九州工業大学学術機関リポジトリ

国立大学法人九州工業大学

戦略的研究ユニット化促進プロジェクト

お知らせ

2017.01.23

2017年3月3日 第29回物性グループセミナー (本ユニット主催)

第29回: 2017年3月3日(金)  15:00-17:00

【場所】
九州工業大学戸畑キャンパス本部棟1F TV会議室 &飯塚キャンパス (飯塚)TV会議室
(TV会議システムを使って行います)

【講演者】
三澤貴宏 (東京大学物性研究所計算物質科学人材育成コンソーシアム主任研究員)
河村光晶 (東京大学物性研究所計算物質科学人材育成コンソーシアム研究員)
堀出朋哉 (物質工学研究系・助教)

 

【講演内容】
15:00-15:40
【タイトル】 強相関効果による高温超伝導発現機構
【講演者】 三澤貴宏
(東大物性研・主任研究員)http://pcoms.issp.u-tokyo.ac.jp/cultivation/youngresearchersmisawateam/members/misawa
【概要】 近年の強相関電子系に対する数値計算手法の進展と, それを用いた強相関電子系における高温超伝導機構に対する我々の最近の研究結果について紹介する。特に, 銅酸化物高温超伝導体を記述する最も基本的な模型であるハバード模型および鉄系超伝導体に対する第一原理有効模型の解析を行ったところ, いずれの場合にも相分離領域近傍で増大する一様な電荷感受率の増大が高温超伝導発現と密接に関連していることを示した結果について発表する。さらに, この超伝導発現機構を反映して, 高温超伝導体の界面では積層方向の自由度を使うことで, 伝導が自発的に最適される機構が存在することを明らかにした結果についても発表する [1]。この結果は, 最近の銅酸化物界面で実験的に報告されている超伝導転移温度がドーピング濃度によらず固体の場合の最適値に保たれる振る舞いをよく説明するものとなっている。
[1] Takahiro Misawa et al., Sci. Adv. 2, e1600664 (2016).
http://advances.sciencemag.org/content/2/7/e1600664

 

15:40-16:20
【タイトル】YNi2B2Cにおける異方的超伝導ギャップの第一原理計算
【講演者】 河村光晶 (東大物性研・研究員)
http://pcoms.issp.u-tokyo.ac.jp/cultivation/youngresearchersyoshimiteam/members/kawamura

【概要】 YNi2B2C はフォノン媒介型超伝導体であるにもかかわらず異方的な超伝導ギャップを生じるという風変わりな特性を持つ. また,
ホウ素原子の同位体効果が観測されていることから,軽元素由来のフォノンによって誘起される超伝導体としても興味深い。本研究では,
超伝導密度汎関数理論に基づく第一原理計算を行い, この異方的超伝導の起源を調べた[1]。本研究でのFermi 面上のギャップ関数, および軌道成分の解析により, この物質の超伝導の異方性が主にNi3d 軌道混成の大幅な波数依存性に起因することが明らかにされた。
[1] M. Kawamura, R. Akashi, S. Tsuneyuki, PRB 95, 054506 (2017).
http://link.aps.org/doi/10.1103/PhysRevB.95.054506

 

16:20-17:00
【タイトル】 YBa2Cu3O7-dナノコンポジット薄膜の界面構造と磁束ピンニング特性
【講演者】 堀出朋哉 (物質工学研究系・助教)
http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t4/t4-3/entry-2715.html
【概要】 YBa2Cu3O7-d (YBCO) は臨界温度 (Tc) が高いだけでなく, 高温超伝導体の中でも臨界電流密度 (Jc) が高いため超伝導線材への応用が期待されている。2軸配向したバッファー層を有する金属テープ上にYBCO膜を成膜することにより粒界弱結合の影響を抑制し, 高いJc を有する被覆超伝導体(Coated Conductor) が作製されている。YBCO薄膜のJc をさらに向上させるためにピンニングセンターを導入する試みが行われてきた。非超伝導体であるBaZrO3, BaSnO3, BaHfO3, Ba2NbYO6, Y2O3 などをナノ介在物 (サイズ = 5-20 nm) として高密度 (間隔 = 50-10nm) に導入することにより、量子化磁束を強くピンニングすることができる。特にBaMO3 (M=Zr, Sn, Hf) を導入することにより作製されるナノロッドは高い ピンニング特性を有している。ナノロッドによる磁束ピンニングにおいて, YBCOとBaMO3の界面, ナノロッドのサイズ, ナノロッドの間隔,  ナノロッドの長さ等複数の構造パラメータがピンニング特性を支配している。今回は, 特に界面やひずみに着目し, ナノロッド界面の構造解析結果を示し, その磁束ピンニング特性への影響について議論する。