九州工業大学学術機関リポジトリ

国立大学法人九州工業大学

戦略的研究ユニット化促進プロジェクト

お知らせ

2020.02.20

2020年3月27日 第51回物性グループセミナー (本ユニット主催)

第51回: 2020年3月27日(金) 13:30-17:10

【ポスター】 第51回 Kyutech 物性セミナーポスター

【場所】
九州工業大学戸畑キャンパス・コラボ教育支援棟3階セミナー室
飯塚キャンパス飯塚AV講演室  (TV会議システムを使って中継を行います)

【タイトル】
物質科学における実験と理論

【研究会趣旨】
今回の Kyutech 物性セミナーでは物質科学をとりあげます。物質・材料の特性・機能を調べたり,あるいは,そこで得た理解を応用して物質の新機能の開拓や機能向上のための方策を研究したりする分野が 「物質科学」 です。現在,物質科学研究では,理論と実験がチームを組んで研究課題に取り組むことが一般化しています。理論研究者と実験研究者が共同の具体的目標に向かって知恵を絞り,「チームとしての最大限の力」 を発揮することが求められています。今回の講演会では,こうしたチーム研究を主導的に行ない,表面・界面科学,スピントロ二クス,鉄鋼材料研究など物質科学の様々な分野で大きな成果を上げられてきた方々に御講演を頂きます。物質科学研究で成功するための研究グループのあり方が分かるはずです。

 

13:30-14:20

【タイトル】表面構造研究における実験と計算の協奏

【講演者】 尾崎泰助 (東大物性研/教授) 

【概要】

炭素からなる蜂の巣構造: グラフェンは熱力学的にも安定な構造ですが,そのシリコン版であるシリセンは理論的な観点から仮想構造として研究されてきたものです。しかし近年,理論的な産物であったシリセン構造が金属基板上で実験的にも見出されています。またそれに続いてジャーマネンやボロフェン等の新しい二次元物質も次々に実験的に発見されています。第一原理計算はこれらの新規二次元物質の結晶構造・電子構造の解明において重要な役割を果たしてきました。表面構造研究における実験と計算の協奏に関して第一原理計算の立場から我々の研究 [1-7] を紹介致します。

[1] 高村(山田)由起子,尾崎泰助,応用物理学会誌 第86巻 第6号 488 (2017).

[2] T. Ozaki and C.-C. Lee, Phys. Rev. Lett. 118, 026401 (2017).

[3] A. Fleurence et al., Phys. Rev. Lett. 108, 245501 (2012).

[4] C.-C. Lee el al., Phys. Rev. B 95, 115437 (2017).

[5] C.-C. Lee et al., Phys. Rev. B 97, 075430 (2018).

[6] K. Yamazaki et al., J. Phys. Chem. C 122, 27292 (2018).

[7] C.-C Lee et al., Phys. Rev. B 100, 045150 (2019).

 

14:20-15:10

【タイトル】 磁気異方性の制御

【講演者】 小田竜樹 (金沢大理工/教授) 

【概要】

磁性材料は,その不揮発性と省エネルギー性から社会生活に必要不可欠である。その基礎物性量である磁気異方性エネルギーを現代科学の第一原理から評価することが可能となってきた。物質中電子のスピン状態と軌道運動状態を間接的に変えることで異方性を制御する。磁気メモリ材料開発へ貢献する計算物質科学研究の一端を紹介する。

 

15:10-15:45

【タイトル】キラル磁性体CrNb3S6のX線磁気円二色性実験 ~軌道角運動量の観測とキラルソリトン格子の閉じ込め効果~

【講演者】美藤正樹 (九工大院工/教授) 

【概要】

一軸的ジャロシンスキー-守谷 (D-M) 相互作用ベクトルと有するインターカレート系化合物 CrNb3S6 は,130 K以下でヘリカルな磁気構造を有し,らせん軸に垂直に直裕磁場を印加すると,強磁性配列の中にソリトンが周期的には並んだキラルソリトン格子(CSL) なる磁気超格子構造が安定化される。2012 年の戸川らのローレンツTEM による CSL の観察以降,CSL の物性に関する数多くの研究が行われているが,D-M 相互作用の起源である軌道角運動量の実験的評価は行われてこなかった。そこで,我々はSPring8においてX線磁気円二色性 (XMCD) 実験を実施し,軌道角運動量がスピン角運動量の 1 % 程度であることを明らかにした [Phys. Rev. B (2019)]。また,キラルソリトン格子の形態を試料形状によって制御できることを実験的に明らかにし,トポロジカルなオブジェクトを有する磁気構造ならではの現象を観測することに成功した[Phys. Rev. B (2018)]。

 

休憩 (15:45-15:55)

 

15:55-16:45

【タイトル】 第一原理電子状態計算プログラムの開発と応用

【講演者】吉本芳英 (東大院情報理工/准教授)

【概要】

物質の電子状態を計算する手法は,様々なものがあるが,その中でも密度汎関数法,平面波基底,擬ポテンシャルの組み合わせによるものは汎用性と経済性に優れており,適切に実装すれば今日の計算機の能力をうまく引き出せるものでもある。この講演ではこの手法の技術的側面を解説するとともに,著者が行ってきた拡張や応用計算について説明する。

 

16:45-17:20

【タイトル】 高圧巨大ひずみ加工に伴う同素変態挙動のその場観察

【講演者】 堀田善治 (九工大院工/特任教授)

【概要】

巨大ひずみ加工を高圧下で行うことにより,抜圧後でも高圧相を常圧で存在させることが可能となる。純TiやZnOで生じるこのような同素変態挙動をSPring-8の高輝度X線を使ってその場解析した。転位など格子ひずみで生じた内部応力が高圧相の安定化にかかわることが示された。