九州工業大学学術機関リポジトリ

国立大学法人九州工業大学

戦略的研究ユニット化促進プロジェクト

お知らせ

2018.12.14

2019年1月11日 第41回物性グループセミナー (本ユニット主催)

【日時】

2019年 1月11日(金) 17:00-18:30

【場所】
(戸畑) 戸畑キャンパス本部棟1F TV会議室

(飯塚) 飯塚キャンパス研究管理棟2F TV会議室 (TV中継)

【講演者】

村上洋一 (高エネルギー加速器研究機構・物質構造科学研究所・教授

【タイトル】

鉄系超伝導体LaFeAsO1-xHxの超過剰ドープ領域に出現する反強磁性相

【概要】

鉄系超伝導体では銅系酸化物超伝導体とは対照的に,超伝導に関与する3d電子軌道が複数個存在するために,スピン揺らぎだけでなく軌道揺らぎがクーパー対形成機構に重要な役割を果たしていることが指摘されてきた。本研究の対象物質であるLaFeAsO1-xHxでは,酸素の置換イオンとしてH-を使うことにより,多くの電子をFeAs層にドープすることができる。LaFeAsO反強磁性相(AF1相)に電子をドープしていくに従って,2つの超伝導相(SC1相とSC2相)が順次現れ,さらにドープをするとx=0.5付近で,新たな反強磁性相(AF2相)が出現することが分かった。このAF2相は構造的には中心対称性が破れており,AF1相と比較して大きな磁気モーメントを持ち局在性が強まっている。さらに他の鉄系超伝導体とは異なり,スピンギャップがゼロであることが明らかになった。これらの結果は,ドープ量を増加させていくと,多軌道状態からdxy軌道のみが実効的に重要となる単軌道状態に変化するというバンド計算の結果と整合しており,AF2相はSC2相の母相であると考えられる。この状況はdx2-y2軌道が主要な役割を果たす銅系酸化物超伝導体と類似しており,少なくとも過剰ドープ領域では,クーパー対形成機構としてスピン揺らぎが重要であると考えている。最後に,水素イオンの量子ダイナミクスを利用した超伝導ギャップの決定法についても報告する予定である。